近代的生命保険とビジネス
生命保険の基礎となる相互扶助の精神が古代ローマ時代に誕生し、その後、中世ヨーロッパで普及しました。当時の制度は、公正を期するため組合員は全員同じ金額を積み立てていく代わりに香典として一定の金額を支払うことになっていましたが、この制度では、事故で一度に多くの死者が出たり、組合員の数が減ったりすると破たんしてしまう恐れがありました。
また、年齢にかかわらず毎月の支払額が一定という仕組みでは、世代間の公平性を保てないことから、18世紀に入り、イギリスで、「大数の法則」(※)を用い、加入者の年齢等を考慮し、統計的な死亡率や平均余命などを計算して保険料を算出するという、長く、継続して運用ができる近代的生命保険制度が確立されました。その後、世界各国にイギリスの制度を踏襲した生命保険会社が誕生しました。
このような欧米の近代的な保険事業を日本に伝えたのが福沢諭吉です。1867(慶応3)年に著書「西洋旅案内」において、生命保険と火災保険、海上保険という3つの保険の概念を紹介しました。
※大数の法則:対象とする事象の数が多くなればなるほど、その事象の発生は一定値に近づくというもの